万座の夏、僕が僕を選ぶまで
万座の夏、僕が僕を選ぶまで
スタンフォードに通う十四歳の少年が見つけた、本当の居場所
第一章 世界でいちばん若い大学生
アルフレッド・神崎、十四歳。
飛び級を重ね、スタンフォード大学工学部三年に在籍している。
企業との共同研究を複数掛け持ちし、 周囲は教授や研究者ばかり。
誰も彼を子供扱いしなかった。
成果はある。 賞賛もある。 だが心だけが空っぽだった。
第二章 母の故郷
夏休み。
母に連れられ、 群馬県の万座高原へやって来た。
祖父母が営む老舗温泉旅館。
そこでは誰も研究の話をしなかった。
その何気ない一言が、 なぜか胸に残った。
第三章 真由との出会い
裏山で出会った同級生の真由。
翻訳アプリ越しの会話から、 二人は少しずつ仲良くなっていく。
川遊び。 秘密基地。 夏祭り。 花火。
アルは十四年間で初めて、 友達と遊ぶ喜びを知った。
第四章 桜井家
真由の家はいつも賑やかだった。
父の健一。 母の美香。 弟の陸。 祖母のハル。
誰もアルの肩書きに興味を示さない。
そんな会話ばかりだった。
しかしその時間こそが、 アルの心を少しずつ癒していった。
第五章 家族になれた夜
帰国前夜。
桜井家の夕食。
鮎の塩焼き。 味噌汁。 採れたてのトウモロコシ。
アルは立ち上がった。
たどたどしい日本語だった。
だが全員に伝わった。
真由は涙を流し、 陸は黙って下を向いた。
健一は照れくさそうに笑った。
ハルの言葉に、 アルの胸はいっぱいになった。
エピローグ
スタンフォードへ戻った後、 アルは研究を少し減らした。
テニスを始めた。
そして日本語を勉強した。
論文のためではない。
来年の夏、真由と自分の言葉で話すために。
一年後。
再び訪れた万座高原。
翻訳アプリはもう必要なかった。
あの夏は、 アルの人生を変えた。
自分の人生は、自分で選んでいい。
それを教えてくれたひと夏の冒険だった。
コメント