命燃ゆる京 第二部「京都炎上編」
第二部「京都炎上編」
次世代AIを巡る、京都大学・内務省・天衡の暗闘
第一章 消えた恩師
京都の夜は静かだった。
鴨川の水面に街の明かりが揺れている。神崎蓮は、いつものコンビニの休憩室でスマートフォンを眺めていた。
画面に表示されているのは、京都大学工学部時代に世話になった恩師、桐生修一教授の記事だった。
桐生教授は、蓮が学生だった頃、研究室で何度も相談に乗ってくれた。成績だけではなく、卒業後の進路や吉田寮での生活まで気にかけてくれた人物だった。
桐生「蓮君。技術者は、技術を作るだけでは駄目だ」
桐生「その技術を誰が、何のために使うのかまで考えなさい」
その言葉は蓮の人生に残っていた。
ところが三日前、桐生教授が突然消息を絶った。大学は「本人と連絡が取れない」とだけ発表していた。
そこへ、吉田寮時代の仲間、高瀬航と三上直人が現れる。高瀬は大阪のIT企業のシステムエンジニア、三上は物流会社員になっていた。
高瀬「桐生教授は、失踪したんじゃない」
蓮「根拠は?」
三上「教授の研究データが、大学から大量に消えている」
蓮「……天衡か」
第二章 京都大学の秘密
翌朝、蓮たちは京都大学の研究棟を訪れた。そこで待っていたのはAI研究者の水城葵だった。
葵は、教授が研究していた次世代AI統合システム「KAGUYA」について説明する。
KAGUYAは、エネルギー、物流、交通、災害対応など都市インフラを統合的に最適化することを目指した研究だった。
京都大学は、この研究について日本の架空の中央行政機関「内務省」と秘密裏に共同研究を進めていた。
葵は続けた。
葵「桐生教授は、この計画に危険性があると考えていました」
葵「AIが都市を助けるのではなく、都市そのものを監視・制御する道具になり得る、と」
蓮は画面を見つめた。天衡が欲しがる理由も分かった。
KAGUYAを手に入れれば、天衡は都市インフラと経済活動を一体として支配する足掛かりを得る。
第三章 裏切り者
調査を進めると、研究室内部に不自然なアクセス記録が見つかった。教授の研究データを外部へ流している人物がいる。
その人物は、研究室の若手研究者黒崎誠だった。
蓮「この人物を知っているな」
黒崎「……」
蓮「天衡の人間だ。なぜ暗号通信が君の端末から出ている?」
黒崎「教授を連れていった場所は……大阪です」
黒崎が渡した情報には、教授が拘束されている可能性のある大阪湾近くの廃物流倉庫の位置が記されていた。
第四章 決死の救出作戦
夜。蓮、高瀬、三上、葵の四人は大阪へ向かった。
誰も軍人ではない。高瀬はITエンジニア、三上は物流会社員、葵はAI研究者。そして蓮はコンビニのフリーターだ。
それでも、恩師を見捨てることはできなかった。
高瀬「本当に入るのか?」
蓮「教授がいるなら、行く」
三上「無茶だぞ」
蓮「分かってる」
葵「……私も行きます」
地下へ続く階段の先に、桐生教授がいた。手を拘束され、衰弱している。
蓮「先生!」
桐生「……蓮……君か」
蓮「助けに来ました」
桐生「君まで巻き込まれるぞ」
蓮「学生の頃、先生に何度も助けてもらいました。今度は俺の番です」
第五章 命脈、発動
脱出しようとした瞬間、警報が鳴った。天衡の工作員たちが一斉に現れる。
高瀬たちは教授を連れて逃げる。蓮だけが最後尾に残った。
敵の攻撃をかわしながら、蓮の身体から熱が立ち上がる。
「命脈――起動」
心拍が跳ね上がり、生命活動がエネルギーへ変換される。拳が光る。
蓮は床を踏み込み、衝撃で敵の進路を止めた。しかし、力を使うほど生命は削られる。
視界が暗くなる。呼吸が苦しくなる。
蓮「……俺一人なら、どうなってもいい」
蓮「でも、先生とみんなは連れて帰る」
第六章 いのちからがらの脱出
三上が見つけた非常用通路から、五人は倉庫の外へ出た。しかし出口の向こうにも追手がいた。
三上が手配していた車両へ全員が乗り込む。倉庫街を抜け、追跡をかわしていく。
蓮は、もう一度命脈を使えば逃げ切れるかもしれないと考えた。だが、今度こそ身体が持たない。
高瀬「蓮! お前一人で戦うな!」
三上「俺たちも吉田寮の仲間だっただろ!」
葵「あなたの命を、簡単に使わせません!」
高瀬は通信を支え、三上は物流の知識で脱出経路を選び、葵は研究データから追跡システムの弱点を探した。
蓮も最後まで仲間を守った。
何度も危機に陥りながら、五人全員が無事に大阪を脱出した。
京都へ戻ったのは、夜明け直前だった。
第七章 恩師の告白
京都へ戻った桐生教授は、蓮たちに真実を語った。
KAGUYAは単なるAIではない。京都大学と内務省が共同で進めている次世代都市AI計画の中核だった。
目的は、災害、交通、エネルギー、行政サービスを統合し、危機に強い都市を作ること。
しかし教授は、その技術が権力によって悪用される危険性を発見していた。
桐生「AIは、人間の命を守るために作られるべきだ」
桐生「だが、権力がAIを握れば話は変わる」
桐生「都市を守るシステムが、都市を管理するシステムになってしまう」
そして天衡は、KAGUYAの完全版を狙っている。
「天衡は、世界の経済そのものをAIから動かすつもりだ」
第八章 京都炎上
その夜、京都市内の複数のシステムが同時に異常を起こした。交通信号、金融ネットワーク、大学の研究システム、通信施設、そして京都駅周辺。
すべてが一斉に混乱する。
天衡の目的は、京都大学に残されたKAGUYAの研究データを奪うことだった。
蓮たちは大学へ向かった。夜の京都大学。研究棟の窓から赤い警告灯が漏れている。
蓮「京都を戦場にさせるわけにはいかない」
高瀬「だったら、終わらせよう」
三上「吉田寮の仲間、全員集合だ」
葵「先生も守ります」
桐生教授は静かに微笑んだ。
「ありがとう。君たちは、立派な技術者になったな」
蓮は笑った。
「俺はフリーターですけどね」
教授も笑った。
「それでもいい。人を守る技術者ならな」
終章 次なる戦い
夜明け。京都の街に朝日が差し始めた。
今回の事件は終わった。桐生教授は救出され、蓮、高瀬、三上、葵も全員無事だった。
しかし、天衡は撤退しただけだった。奪われた研究データの一部は、すでに国外へ送られていた。
さらに桐生教授は、最後に蓮へ一つの暗号化されたファイルを渡した。
「これは、天衡が最も恐れているデータだ。そして、君の『命脈』とも関係している」
画面には世界地図が映る。京都、大阪、上海、台北、シンガポール、ロンドン、ニューヨーク――世界各地に赤い点が浮かび上がった。
天衡は、すでに次の段階へ進んでいた。
蓮のスマートフォンにコンビニ店長からメッセージが届く。
『蓮、明日の朝シフト入れるか?』
蓮は苦笑した。
『入ります。でも、その前にちょっと大阪まで行ってきます』
高瀬が呆れた顔をする。
「お前、世界規模の陰謀と戦ってるんだよな?」
蓮は肩をすくめた。
「コンビニのシフトも大事だからな」
命脈の秘密と天衡の世界支配計画は、まだ始まったばかりだった。
コメント