暁の世界 ――4章 政治家――

第四章 政治家|暁の世界

暁の世界

――崩壊の連鎖――
第四章 政治家
その頃、直人は会社を辞めていた。

理由は単純だった。会社がなくなったからだ。

正確には、倒産したわけではない。世界経済の分断によって、日本支社そのものが解散した。

42歳だった直人は、再就職する気になれなかった。代わりに、地方自治体の危機管理ボランティアに参加した。

そこで彼は初めて政治家たちと接した。

食料。エネルギー。避難所。外国人支援。物流。問題は山ほどあった。

しかし政治家たちは、目先の選挙ばかりを気にしていた。

ある日の会議。

議員が言った。

「国民が安心するようなメッセージを出しましょう」

直人は思わず口を挟んだ。

「安心させることより、現実を説明することが必要なんじゃないですか」

部屋が静かになった。

「あなたは政治家じゃないでしょう」

「だから言えるんです」

直人は答えた。

「国民が知りたいのは、政府が何を隠しているかじゃない。明日、電気が来るのか、食料があるのか、自分の家族を守れるのかです」

その発言がSNSで拡散された。一週間で数百万回再生された。

そして、直人のもとに政治団体から声がかかった。

「次の衆議院選挙に出ませんか?」

直人は笑った。

「私が?」

「あなたには、今の政治家にないものがあります」

「何です?」

「普通の生活を知っていることです」

2036年。高橋直人は政治家になった。

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