一畑線・夏の淡い恋 第2章 宍道湖の夕暮れ
一畑線・夏の淡い恋
第2章 宍道湖の夕暮れ
数日後、祖母に頼まれて買い物へ出た帰り、私は駅の近くであの男の子に出会った。
「この前、電車に乗ってたよね」
突然そう言われ、私は驚いた。
「……うん」
「やっぱり。東京から来た子?」
私は頷いた。
彼の名前は直人。近くの中学校に通っていて、夏休みには家の手伝いをしているらしい。
その日、直人は私を宍道湖の見える場所まで案内してくれた。
夕方の湖は、昼間とは別の顔をしていた。
水面は風に細かく揺れ、空の青が少しずつ淡い紫へ変わっていく。西の空には細長い雲が浮かび、その下から太陽の光が湖へ一本の道のように伸びていた。
遠くを小さな船が進んでいた。
「きれい……」
思わず口にすると、直人は湖を見たまま言った。
「夕方の宍道湖が一番好きなんだ」
「毎日見てるの?」
「毎日じゃない。でも、見慣れてるからこそ、たまに違って見えるんだよ」
その言葉が妙に心に残った。
帰り道、二人の影が長く伸びていた。
私は何度も、隣を歩く直人の横顔を見た。
そして、見ていることを気づかれないように、少しだけ歩く速度を遅くした。
第2章
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