一畑線・夏の淡い恋 第3章 出雲大社の大きな木
一畑線・夏の淡い恋
第3章 出雲大社の大きな木
八月のある朝、直人と出雲大社へ行くことになった。
参道に近づくにつれ、空気が静かになっていくようだった。
大きな鳥居をくぐると、両側には深い緑が続いていた。夏の日差しは強いのに、参道には木々の葉がつくる涼しい影が落ちている。
玉砂利を踏むたび、乾いた小さな音がした。
見上げると、古い木々の枝が空を覆い、その隙間から白い雲が見えた。
出雲大社の境内には、長い年月を重ねた木々が立っていた。幹には深い皺が刻まれ、根元には苔が広がっている。
「ここに来ると、時間がゆっくりになる気がする」
私が言うと、直人は笑った。
「東京にも、こういう場所ある?」
「あるけど……たぶん、こんな感じじゃない」
二人で歩いていると、拝殿が見えてきた。
大きな注連縄が目に入り、私は思わず立ち止まった。
「大きいね」
「うん」
風が吹き、木々の葉が一斉に揺れた。
ざわざわという音が、境内いっぱいに広がる。
私はそっと目を閉じた。
お願いごとは、決まっていた。
夏休みが終わっても、もう少しだけ、この町にいたい。
そして、できれば直人とも、もう一度会いたい。
目を開けると、直人がこちらを見ていた。
「何をお願いしたの?」
「秘密」
私は笑った。
直人も笑った。
それ以上、何も言わなかった。
第3章
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