一畑線・夏の淡い恋 第4章 夏の終わりのホーム
一畑線・夏の淡い恋
第4章 夏の終わりのホーム
八月も終わりに近づいた。
東京へ戻る日が近づくにつれ、私は一畑線の電車に乗るたび、胸の奥が少し重くなるのを感じていた。
ある夕方、直人と駅のホームで話をした。
ホームの向こうには、夏の田んぼが広がっていた。青々とした稲穂が風に揺れ、ところどころに白い雲の影が落ちている。
「明日、帰るんだよね」
「うん」
直人は少し黙った。
「東京って、遠い?」
「電車をいっぱい乗り換えるくらい」
「そっか」
それだけだった。
やがて電車が入ってきた。
私は乗り込む前に、直人へ小さく手を振った。
「また来年」
「……うん。また来年」
ドアが閉まった。
電車が動き出す。
直人の姿が少しずつ遠くなる。
私は窓から見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
その夜、祖母の家の窓から見える空には、夏の星が出ていた。
私は机の上に置いた小さな紙袋を開いた。
中には、直人がくれた小さな貝殻が入っていた。
宍道湖の近くで拾ったものだという。
私はそれを手のひらに乗せた。
たった一つの貝殻なのに、夏の景色が全部そこに詰まっているような気がした。
第4章
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