暁の世界 ――1章 ロシアの冬――

第一章 ロシアの冬|暁の世界

暁の世界

――崩壊の連鎖――
第一章 ロシアの冬
2030年。

ロシアは崩壊した。

始まりは、戦争そのものではなかった。

原油価格の暴落。長期化する制裁。人口減少。軍事費の増大。地方政府への補助金停止。そして、モスクワと地方の間に生まれた巨大な亀裂。

最初に反乱したのは、極東だった。次にシベリア。その後、北コーカサス。

モスクワ政府は軍を派遣しようとした。しかし、命令を実行する部隊が足りなかった。

軍内部でも分裂が始まっていた。

2030年11月。クレムリンから世界に向けた演説が行われた。しかし、その演説は途中で突然終了した。

数時間後、ロシア連邦政府は「中央政府機能の一時停止」を発表した。

世界は、その言葉の意味を理解するのに三日かかった。

ロシア連邦は事実上崩壊した。

旧ロシア領には複数の暫定政権が誕生した。ヨーロッパは歓喜した。中国は沈黙した。アメリカは警戒した。

そして日本では、誰もが同じ問いを抱いた。

「次はどこだ?」

直人はテレビ画面を見ながら呟いた。

「……中国だ」

妻もいない。子供もいない。42歳になった直人にとって、会社だけが人生の中心だった。

だが、その会社もまた、世界の変化から逃れることはできなかった。

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